« つくばエクスプレスとユーロスペース | トップページ | 石川監督新作 »

2005年11月 9日 (水)

カミュなんて知らない

柳町光男監督の作品って、過去に見たことがあるかどうか、記憶がない。記憶がないぐらいなので、自分の中で、この監督の作品は、こう、という位置づけがない。一時期、というか学生時代、日本映画に関しては、作家性の強いものが苦手だったため、例えばATGや東映セントラル・フィルムの作品などは、興味の範疇外だったりしたのだが、ちょうど、その頃にもっとも話題になっていた監督のひとり、という気もする。『カミュなんて知らない』という、すでにタイトルがすわりが悪い、映画学生の青いロマンの香りがするその作品は、ちょうど、この映画に出てくる田口トモロヲが「この人、だんだん学生っぽくなってくる」といわれる30代後半の男だが、これがちょうど監督とダブるのかな、と思った。もう、シネアストが作る映画といえば、こう、と自己パロディのような長回し(長回しをやめる時の理由がこの場合、大切になるが、ここはさすが。ここでの初めてのカット割りが、物語全体の重要性をもつ意味を表現する!)、異常に多用される映画関係の固有名詞、「ただ、映画のことについて、話したい。映画について知っていると思われたい」ためだけの会話をはじめとする、大学生時代の記憶をもう一度アルバムからひっぺがす、なかなかシャイな人間には度胸のいる行為を潔く行う。ベテラン監督が作った「架空の、優秀な若手新人監督のデビュー作」の感。一見、すべてリアルではなく、学芸会のようだが、そういえば、周りの学生たちの会話を聴いていても、その多くが「自分たちの会話を聴いている周りの人間たち」をも意識した、芝居性を帯びたものであることが多く、それがまた、学芸会レベルっぽいところを思うと、「学芸会の芝居っぽい会話」が逆にリアルである、という結論を持つことになる。映画内映画の主役を演じる青年はアンガールズ田中的で、スクリプター兼自分が好きだからついでに音楽担当をする女の子は、ちょうど学生時代の菅野よう子ってこんなのだったのかも、と思わせずにいられない不思議ちゃん。主役ふたりがもっとも没個性というのも、セオリー通りだ。

|

« つくばエクスプレスとユーロスペース | トップページ | 石川監督新作 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92257/7004963

この記事へのトラックバック一覧です: カミュなんて知らない:

« つくばエクスプレスとユーロスペース | トップページ | 石川監督新作 »