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2012年5月12日 (土)

興味深い通過点としての「LAST NIGHT(恋と愛の測り方)」

『LAST NIGHT(邦題「恋と愛の測り方」』鑑賞。自分は、チネチッタで見ましたが、チネチッタ初体験。シネコンの顔かたちをしつつ、全体にこぢんまりとして、地元ミニシアター的香りももつ、不思議な「シネコン」でありました。これからひいきにしたい。
さて、本日が初日ということもありましょうか、もし、東京の単館公開としても、そのぐらいの規模の座席数より少ない館での公開では、と想像される大きさのシアターで、受付で座席表を見せられて、びっくりした。え、そんなに広いところですか。
さて、作品は、期待通りのトーン。ざっくり作品の骨格を反芻するなら、まず音楽が目立った。こんなに目立つと思わなかった。BGMというには、比率の大きなミックスがされている。観客は、音楽を意識せずにはいられない。そう、登場人物たちは、同じ素材をもし与えられた時の仕上がりを想像するものより遙かにおしゃべりだが、まあアレン映画のように機関銃じゃなくて、言葉を選ぶように話すパターン。だが、いずれも、本心を語ってないですよ、私も自分の本心を探しながら話してますよ感が満面にあり、それを補足する「説明」として、一種アンビエントながら甘い孤独感を感じさせる音楽が存在している。ひょっとしたら、主人公二人の意識下にも、同じサウンドが流れているんじゃないか、ぐらいの勢い。
主人公のカップルは、自身に感情の揺れがあったろうことを自分でも期待しつつも、それを相手には悟られないようにしようとする、ナルシスティックかつマゾな快感を持っている感じ。中盤の、ナイトレイに対し、グリフィン・ダン扮する出版社の社長という男のディナーでの語りの「自分は大人だから、あなたがたがわけありなのはわかっているが、そこは人生の達人ぶりを見せないといけないので、ちょっとかっこつけた会話をさせてもらうよ」感がいかにもで面白い。
全体の感想は、もちろん、こういう人間模様も、実際にあるだろうが、男女の感情のゆれぐあいをオブジェを見るように観察する思い。演技に激しさを求めていない作劇でもあるため、その点も不快にさせられることが自分にはなかった。
この作品一本が傑作かどうか、ということはわからないが、多くのアクションを求められる大型作品での活躍が多いスター俳優たちの、経験の一つとして面白いし、観客側も、そういった役者たちの抑えた演技を見るという貴重な機会かつ、マンセルが甘い大人のアンニュイな一夜を演出する音楽を作る、というのも貴重かつ興味深いし、大体、今回のような企画題材自体が形になることも貴重だろうから、いろんなことについての、貴重な通過点として楽しむことができた。ほぼ全シーン室内かつ夜というのも、楽しめた。年に一本しか映画を見ない人のための映画ではないかもしれないが、小説好きなどで、本作のようなトーンがしっくり来る人は結構いるかもしれない。
邦題は『昨夜』でよかったんじゃないでしょうか、エロチックさや大人らしさも出るし。チケット買う時がやはり恥ずかしかったです。

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