異常設定下でのふた組のカップルの会話劇『崖っぷちの男』
『崖っぷちの男』於:丸の内ルーブル。クレバーな作りになっても良いはずのプロットなのに、この手の映画の感触とは違う感覚がある。この映画のユニークさは、まず女性刑事が緊急電話を取り損なうシーンで感じ取られ始める。デジャヴュ的刑事ドラマのかっこよさからは外れていくのだ、この作品。ここで、それを感じ取る。しかし、本当にそうなのか、たまたまじゃないのか。しかし、最後まで、エンディングまで走り終わって、それは確信的なものだったことがわかる。用意周到なサスペンス・ミステリーと見せかけて、作り手の興味は、なんとそこにはないのだ。仕掛ける男と、説得に入る女刑事、そして兄貴との腐れ縁的なものから、それなりの信頼感を兄にかける弟と肉感的なラテン美女の彼女の、このふた組のかわいらしい大人の会話劇がメインなのだ。そして、そこには、とてつもなく、異常な環境下での男女のドラマ、この2つそれぞれは、舞台劇としても、面白いものになるだろう、そして、その奇抜なシチュエーションを繋げるために、全体のプロットがでっちあげられているかのような映画。この「シーンありき」的発想は、北野映画や、タランティーノ映画にも通ずる。ただし、これは脚本の未熟なゆえかどうかは不明だが、この2組のカップルの会話は、断片的であり、かつ探りあい的な意味合いを持ちつつも、その脚本は、答えを求めないことが多い。それがリアルといえばリアル。タランティーノ映画の会話のようなパーフェクトさはないが、そのカジュアルさが、この映画のバランスにはなっている。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (1)
最近のコメント