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2012年9月15日 (土)

ロケーションの主役性に集約させる『ル・コルビュジエの家』

『ル・コルビュジエの家』於K’s Cinema。
建築メインの文化映画的なところにプラス演劇が加わる感じと思っていたので、物語とロケーションのバランスが同等的な割合なのが意外だった。物語の進行としては、典型的なパターンを踏襲しつつ、その中で異質なバランスになるのは、客観的に観て、実は主人公の方が「嫌なやつ」「困った隣人」なのじゃないか、とわかり始めること。どんな人間にもいろんな面があるぐらいで終らせてもいいことではあるが、そこを省略せずに描くことで、見る側は、どの人物に感情移入すべきか、いずれとも距離をもつことになり、そこでロケーションだけが生きてくるということになる。
アングル先にありき、なシーンの数々は、そのシーンが始まるや、これがどういう緊張感を表すシーンなのかが瞬時にわかるようになっている。そこに、さまざまなアーティストたちの助力が、パフェのトッピングのように付加される。
一曲一曲がポップなアンビエントとして完成しているサウンドトラックや、全体の、滑らかではない物語の流れは、プロの劇映画屋たちの手馴れた仕事ではないゆえに出てくるいびつな楽しさであろう。これこそ、映画屋以外が映画を撮ったときの偶然の面白さ。
ところで、この映画も、なんとパンフレットがある。解説以外には、建築家の伊東豊雄氏の、この映画の主役であるところのクルチェット邸についての解説、監督ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーン、主役のラファエル・スブレゲルブルトとダニエル・アラオスのかなりしっかりしたプロフィール、小柳帝氏の印象論、脚本のアンドレス・ドゥプラットのインタビュー、メキシコ在住フリーライター長屋美保氏の監督へのメール・インタビュー、大成建設ギャルリーの学芸員の林美佐さんのル・コルビュジエについての解説、と盛りだくさん、入手した資料は全て公開の勢い。
パンフ中の監督のインタビューによると、「映画」は重要視していないらしい。それは、彼らのプロフィールからもわかるし、だからこそ可能な映画でありましょう。
建築映画といえば、自分は『マイ・アーキテクト』しかパッと思い浮かびませんが、あれはあれで、建築家の映画だが、理解していなかった父を理解するために息子が辿る旅、という「建築の凄さ」を見せる作品では実は、ない、ということも思い出したりします。

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