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2012年9月23日 (日)

研究者の考察を参考にしつつタルコフスキー『アンドレイ・ルブリョフ』『鏡』

『アンドレイ・ルブリョフ』『鏡』於横浜シネマ・ジャック
自分にとって、20数年ぶりのタルコフスキー2本立て。しかし、以前に決行した20代前半の頃と比較すると、3時間と聞いても、げんなりというよりワクワク感のほうが立つのは、やはりトシのせいでしょう。
おそらく、ともに未見と思ったので(少なくとも、記憶がない)、続けてみることに。さて、先に『アンドレイ・ルブリョフ』。タルコフスキー映画の難解さは、まずは、ソビエト、ロシアの歴史について、ある程度知っていないと、なかなか容易に意味づけはできない、というところにあると思う。映画にもいろいろあって、いわゆる娯楽、アトラクション映画から、詩人もしくは絵画の延長としての作品を映像に焼き付けたものがあり、もちろん、タルコフスキー映画は後者なのだが、これは、一回見てどう、というよりは、さまざまな文献にあたるなどして、研究されていく、「対象」としてのあり方も間違ってはいないと思う。ただ「映画」というスタイルで完成しているため、解釈に時間がかかることに恐れをなしてしまうという錯覚が出てしまう、ということだと思う。
『アンドレイ・ルブリョフ』は、タルコフスキーの個人的な部分を色濃く出しては、おそらくもっとも「ない」作品なので、本当は、当然の如く、予習・復習は必要とは思うが、とりあえず、ただ「見ただけ」の印象的感想。タルコフスキー作品としては、珍しくコミカルさが時おり感じられる。強烈なイメージも焼き付けるが、人間の表情を見つめる画像が多い。より、絵画というより、演劇を感じさせる。画家の映画なのだが。
そして『鏡』。逆なのは知って、あえて言うが『ノスタルジア』にあまりにも似た画面、そして色、特に緑。難解難解と聴いていたので、これはあえて先に内容をある程度予習して鑑賞。すると、タルコフスキー作品としては予想以上のシーン(というのかな)展開のめまぐるしさにもかかわらず、理解できる。ネックとなるのは、だからこそなのだが、現在と過去の人間関係が酷似していることで、これを見誤ると訳が判らなくなる。もちろん、そういいつつ、理解しきっているわけでは全くないのですが。過去(幻想)と現在、そして白黒とカラーを使い分ける場合、ほとんどの場合が、現在ではない方がカラーになっている気がする。過去・幻想ほど、現在の自分の心理状態の中では「リアルであってほしい」という願いを実現させているのだろうか。現実ほど存在感を失い、過去が鮮明になる。

2012年の「タルコフスキー特集」(企画・パンドラ)としてのパンフが出ている。500円。今回の特集によせるユーリ・ノルシュテインとアレクサンドル・ソクーロフのコメント、そして注目の原稿は、東京外国語大学准教授(ロシア語専門)の前田和泉さんの「父と息子」。アンドレイと父アルセーニイの関係、そしてタルコフスキーの家族関係を軸に、作品への投影状況の考察。『鏡』の相当な参考資料となる。もうひとつが映画学およびロシア文化研究を専門とする映画研究者(評論家ではない)の西周成さんのプロダクション・ノート的に読み解く「運命と使命 アンドレイ・タルコフスキーの場合」。タルコフスキー死後の旧ソ連諸国の若い映画作家への影響まで波及しており、今後の鑑賞の参考になる。

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