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2012年10月29日 (月)

すべてについてのバランス『KAMIKAZE TAXI』

KAMIKAZE TAXI』於早稲田松竹

この映画を傑作である理由は、さまざまな「映画に期待される要素」の配置というか、バランスにあるのだろう。すなわち、例えば、役者の演技であれば、自然な振る舞いと、突拍子もない予測のつかない振る舞い、セリフも、やや説明的なセリフと、物語上は不要だが、作品の性格付けとして必要なセリフ、ジャンルの構成要素としての、ラブストーリー、ヤクザもの、社会派な要素、そして映画のリズムとしての緩急、緊張と緩和、それらが、大きなストーリーとしては、昔の東映ものから、今ならタランティーノが好みそうな、ある種、単純明解な復讐譚。ただ、この復讐譚についても、どの人間が主軸に動いていくかが、途中でずれるわけである。ここの部分が、これはストーリーの組み立てが、だが、ふたつのミステリーの手法を混合させたアイデアである。

冒頭の進ませ具合によって、この映画が、単なる?バイオレンスものでないことを示唆する。それは、後半以降に効いてくるわけだが、伏線をどこで回収していくかのタイミングもクレバーである。

ただし、ここで原田監督のすごさは、これらは全て、役者の演技が文句全くない状況の中で交差させられる余裕のアイデアなのであって、ここに行き着くまでには、下地としての、このあたりのことは当然、みんな周知していることみたいなものがあるように思われる。

 編集がいかにも、おそらく意図して、昔の邦画のテンポをもっている。それは、フィルムを編集するから生れるタイミングのようなものである。カットの繋ぎ方は、スピーディにはせずに、そもそも細かいカットが繋がっていく緊迫感のシーンを決して長く作らないこともあるが、これは、この物語ゆえのものではあるのだろう。また、アクションのインパクトを編集で見せることはしない、そんなスタイルのようなものがこの映画にはあるように思える。原田映画が総じてそうなのかは、ちょっとわからないし、あらゆるジャンルを撮る監督のため、作品のジャンルによってのスタイルの使い分けももちろんあるかもしれない。

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