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2012年10月20日 (土)

ハードな人生の「どの部分をじっくり描く」か『思秋期』

『思秋期』於・新宿武蔵野館3

こんなにハードな話だとは思っていなかったが、物語の雰囲気の推移が面白かった。物語自体はハードなのに、要所要所でコミカルな雰囲気をもったり、優しい時間が流れたりする。もちろん、ずっと真正面から緊張感たっぷりに描いた場合、かなり気力を使うことになるストーリーだから、転がりを見せる間の、転がっていない箇所の時間の描写をしっかり入れることは、物語を見せる側の姿勢としてあるべきだろうし、物語のどの部分を、より強調したいか、の表れでもある。

ぶっちゃけたたとえで言うと、「大仕事」をこなさなくてはいけなかった日の一日が終って、その後、晩飯のビールがうまかった、という一日があり、その一日を描く、というテーマがあった場合に「晩飯のビール」に重きを置く、ということだ。

この映画の場合は、社会問題を描くには漠然とさせているし、その後の展開のことからしても、描かれるひとつである「家庭内暴力」が主眼になっているわけでもなく、主人公の、自分でもコントロールが利かない衝動さ、についても「それゆえの哀しみ」のほうに主眼はある。

また、男と女が、互いを必要としていく、という物語でありながら、恋愛にも友人関係にも発展しない、という、その状況の描き方がリアル。主人公が「自分のことでていっぱいなんだ」旨のセリフを語るが、まさにその状況で、他者と関係をもつゆとりはない、という感じが、語らない登場人物たちの中でしっかり出ている。

あるシーンのあと(ということは、あのシーンがクライマックスだったのだ、ということが終ってから判る)ラストに向ってが、後日談的に急に展開させるが、あの展開も、「展開上必要だが、見せたくない部分は駆け足で行く」心配りのような気もする。

 

パンフはエスパース・サロウ発行700円。こちらも、監督・主演2人のインタビューでほぼ補完している。芝山幹郎氏のコラムは、これ、コラムというより、記名原稿での「あらすじ」でしょう。補完事項は一切ない。そして内田春菊さんの、これもコラムというより長いコメントいただきました、の感じ。

パンフで補完してほしかった点。この映画の元となっているコンシダイン監督の短編「DOG ALTOGETHER」とはどのような作品だったのか、とハンナが務めている「キリスト教のチャリティーショップ」について。これは、多分、説明なければ、どういった店舗なのか、わかりづらいと思う。

そして、デザインについて。この紙質で、赤地に黒字は非常に読みづらい。

そして、これだったら、英国俳優ファンの方コンシダインとミュランについて書いてもらってもよかったのではと思う。

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