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2012年11月26日 (月)

語られてこなかった側から撮るということ『死刑弁護人』『長良川ド根性』

『死刑弁護人』『長良川ド根性』於・ポレポレ東中野

ともに、パンフレットも発売されていたので、その話もまとめて。東海テレビ放送が、放映後に劇場公開も行う、というシリーズの第3弾と4弾。パンフがある、というのは、劇場公開についての心構えがホンモノだと感じ取ることが出来る。

東海テレビでドキュメンタリーといえば、自分にとっては、しばらくの間、フジテレビでもネットされて日曜の早朝に見られた「ふるさと紀行」が印象深い。ものすごく地味な番組だったが、あの徹底した抑揚のない落ち着きは知性に満ちていた。

『長良川ド根性』のパンフで水道橋博士氏が、東海テレビのドキュメンタリーの、もともとの確かさについて書いている。そういうテレビ局なのだ、とわかる。

『死刑弁護人』『長良川ド根性』ともにいえることは、知られている事件・事象ではあるが、そちら側から描かれたことはなかった、という視点で撮られている長編であることだ。そして、製作意図としても、その描いた側を擁護するものではなく、ある事象がある時に、多面的視点で物事を推察する姿勢を忘れないでほしい、という視聴者への思いゆえの製作である、ということだ。

『死刑弁護人』は、コラムは、ドキュメント映画としての確かさを想田和弘監督が、そして社会ドキュメントとしての題材からの立場を青木理氏が解くという、これ以上ない執筆陣。『長良川ド根性』は、水道橋博士と、「森づくりフォーラム」代表理事の内山節氏が自然と人間の関係性の再度の提言とでもいうべき原稿を書いている。

思ったのは、この2作品とも、社会派ドキュメンタリーと取ると、近づきがたいかもしれないが、もし、これを題材に劇映画が作られたとしたら、きっと、さらに多くが興味深く感じるのかもしれない、ということで、そう思うと、それよりも、実際、実物側を見るほうが、衝撃の強さは増すのに違いない。

 

そして、この2本、ともに音楽プロデュース 岡田こずえ氏により、前者が村井秀清、後者が本多俊之各氏音楽担当という、豪華な音楽アプローチがされていることで、といっても、かなりシンプルなメロディでともにミニマル・ミュージック的作りのナンバーが、特に前者はかなり、音楽のタイミングに気を配って流されるものなのでありますが。大体、ドキュメンタリーにおける劇伴ほど難しいものはない。特に、肯定的な人間ドラマなものではなく、社会派で、コミカルなシーンはほぼない場合はかなり難しい。前者も、「疑惑のシーン」とでもいいたい部分がほとんどで、盛り上げる、とかそういう方向の音楽はありえない。後者の、人間くささは、若干讃えるためのメロディは許されるでありましょうが。前者、村井さんといえば「世界ふれあい街歩き」「プロフェッショナル仕事の流儀」と、ともにドキュメントといえども、肯定的に進行するのが可能な、というかその方向の番組であるため、スコアも万が一マックスに流しても違和感はない。音付けが難しそうなドキュメンタリーのサントラで、最近、記憶にあるのは菅野祐悟氏『MEGAQUAKE 巨大地震』で、ドラマチックな盛り上げが必ずの氏の音楽で、相当メロディの抑揚に気を配っている苦労が聞き取れた。

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