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2012年11月10日 (土)

人生初岩波ホール。『菖蒲』

アンジェイ・ワイダの映画を今までに見た記憶がない。というか、もちろん娯楽的映画から鑑賞人生を始めた自分だが、おそらく「岩波ホール」の映画に抵抗があったのだと思う。多分、自分が始めてみた、岩波ホール上映作(だが、見ているのは、もちろん大阪の劇場。多分、大毎地下)。読み物然としたパンフレットも苦手ではあった。

がワイダの『菖蒲』を見る気分が自分にあり始めたのは、タルコフスキーもタル・ベーラも、寝ずに見ることが出来るようになっている今、なんとなく「ワイダをみてもよい年齢」みたいなものに、自分が自然に思えたのかな、と。そして『菖蒲』がどうも、政治的映画ではないらしい、というところもあったかもしれない。

クリスティナ・ヤンダのモノローグ・シーンの固定カメラでの長回し、と、それに対比するかのように、手法として目立つ方法はとらない「ドラマ演出」部分、そして「演出」とモキュメンタリー的に溶け込むメイキング的シーン。死についての意識が常に言及され続け、しかし、意外なところに、それは訪れる。緑を基調とする、政治映画とはおそらく意識が真逆かもしれない美しい画像。そして、これは現代ならではの反映と思う、ミニマル的音楽。

その苦手だったパンフによると、音楽のパヴェウ・ミキェティンはナイマンやペンデレツキに師事し、『エッセンシャル・キリング』の音楽も担当しているとのこと。今後、映画でも名前をみる機会が多そうな気もする。

フィルモグラフィー見ると『白樺の林』や『愛の記録』など、決して政治映画ではない文学的な作品もワイダは作っている。なので、やはり見なかったのは、なんとなくの岩波ホール・アレルギーであろうと思う。

『菖蒲』のような映画の特性は、重いがシンプルなメッセージを、噛んで含めるかのように、ゆっくりと描いていることだ。ドラマティックな躍動は、おさえられている。というか、既に起こった衝動の、その後の思考を描いている映画である。それだけに、難解といえば難解だ。だが、難解映画すきにとっては、当然のような映画の終結でもあった。

 

パンフは700円。ジャーナリストの伊高浩昭氏が、政治映画印象の切り口からのワイダ論から入る文章、東京外国語大学の非常勤講師久山宏一氏の原作(イヴァシュキェヴィチ)論、アンジェイ・ワイダ、クリスティナ・ヤンダが書くこの映画について、日本大学藝術学部教授の古賀太氏とホスピタリティ☆プラネット代表の藤原瑠美氏の印象論。ワイダの総論が少ない気がしたが、ワイダをずっと見続けてきている岩波ホールからすれば、もう、皆さんごぞんじでしょうから、割愛しても問題ないのだろう(決して皮肉ではありません)。

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コメント

岩波ホールに行けなかったので、DVDで見ました。
字幕が英語なので、分からないところが多くって。
もし、パンフレット、余っていたらお譲りください。

「白樺の林」は、映画と、原作を読みました。

投稿: kazuma | 2013年9月30日 (月) 23時07分

kazuma様
コメントありがとうございます。
パンフレットは、自身の分しか購入しておらず、手放す予定はないため、申し訳ございません。

投稿: babby | 2013年10月 1日 (火) 22時28分

その後、日本語字幕要りのDVDも見ました。
原作(現代ポーランド短編選集(白水社))も読みました。
「菖蒲」も、原作と映画の読み比べてみると、それぞれに魅力があると思います。

投稿: kazuma | 2013年12月14日 (土) 23時06分

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