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2012年12月17日 (月)

自分としては、興味のない部分ばかりが描かれたかのような『砂漠でサーモン・フィッシング』。

『砂漠でサーモン・フィッシング』於・横浜ブルク13

ラッセ・ハルストレム監督作品の、いい意味で子供っぽいファンタジーさは大好きではあったのだが、どうなんだろう、自分の味覚が変わったのか、やはり、この映画に無理があるのか。「ええっ!?」という、取り残された気分に陥るこの映画、さまざまな要素を提示するだけした後、急いで回収して終わる感じ。もともとが処女作である作家による小説を基にしているが、小説というよりは、コミック的であるのは、デフォルメが不自然な形であらわれるからだろう。

考えるに、ひょっとしたら、この大掛かりなラブ・コメを演じる俳優は、ユアン・マクレガーやエミリー・ブラントではなく、もっとコメディのプロを配すべきだったのかもしれない。この作品のおちつかせどころを一番わかっていたのは、あまりにも似合わないオーバーアクションなコメディエンヌぶりを表現していたクリスティン・スコット・トーマスであり、おそらく、彼女的な解釈で、ほかのキャラクターも演じられるべきだったのだ。

というのも、俳優たちは、一見、初期森田芳光映画における、ワザと棒読み演技的な、この作品にあわせた演技で導入しているのだが、しだいにシリアスドラマ向けな演技になっていく。

プロジェクトの関係者たちの日常、というサイドストーリーの位置立てであれば、物語の多重性的に楽しめるのだが、なにぶん、本来、物語のそもそもの発端である、大掛かりなプロジェクトの進行具合がなおざりにされて、主演ふたりの恋愛にしぼられてしまう。

今回の物語の展開で、一番、すじを通したか、といい意味で取れるのは、プロジェクトの雇い主であるところの、イエメンの深き大富豪についての詳細が語られずに終わるということだ。

ダリオ・マリアネッリの音楽は、スウイートな夢物語のテイストを無難に表現。はしばしにフィリップ・サルドを思わせる展開も。

上記を思ったが、「どんな物語を描こうとも、基本的には、人間にしか興味はない、と格好つけるのもいいだろう。そして、それは「どんな物語を描いても、同じ物語になってしまう」ことであって、それがよいのか悪いのかは、ちょっとわからない。この映画を娯楽映画としてみた私の場合は、こんな映画を見るつもりで見たわけではない、という感想にいきついてしまうのだった。

パンフレット700円は、かなり小さいつくり。ペーパーバックを気取っているのでしょう。インタビューがメイン。コラムはモデルのKIKI氏の感想、原作の翻訳をした小竹由美子氏の原作との比較論、いわゆるトリビア的なものと、プロダクション・ノート。

気になったのは<本当にあった、ありえない国家プロジェクト>としての、風船爆弾については特にだが、今回の物語の「計画」とはまったく別の目的を持っているので、同種のものとして語るべきではない。

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受信: 2012年12月28日 (金) 07時28分

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