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2012年12月 1日 (土)

クローネンバーグ・チームの、というよりもハンプトン脚本の映画『危険なメソッド』。

『危険なメソッド』於・横浜シネマ・ジャック&ベティ

クローネンバーグ監督作品だが、シャンテ+ル・シネマが東京公開館である理由は、よくわかりました。これは、どうも、クリストファー・ハンプトンの映画である色が最も濃いように思われる。ザビーナ・シュピールラインがユングの患者となるところから・・・という非常に正統派なドラマの切り取り方であり、かつ、相当の年月を経て、それぞれが濃い個性を持った人間たちが複数からむ物語であるから、それらを丁寧に辿るだけで、相当数の時間を費やさねばならない。

序盤の、ユングが妻に心理実験をしかけるシーンがあるが、ここでの「機器」を使ったある種のプレイ?が、この映画の最も、自分が今まで見てきたクローネンバーグ作品の系譜に準ずるシーンであるが、これ以降、ユングとフロイトの交流が密になる頃からの、「手紙」というツールでのやりとりが、この物語でのユニークな部分であろうとは思う。

そういえば、最近、現代の物語と言うものをどのぐらい観ているか、意識していないが、近年、携帯電話を使ってのやりとりがしげく出てくるかたちは、自然になったと思うが、そういえば、と思ったのが、今の物語の中に、それは小説なども含めて、「メール」や「ネット検索」はどのぐらい登場しているのだろうか。ツイッターやフェイスブックは、物語に自然に登場しないといけないほどの普及はまだしていないと思うが、今は、連絡手段は、「携帯電話」よりも「メール」のような気がするし、「メール」特有の、送り手が送る時間と、受け手が、その連絡を知る時間には、多かれ少なかれタイムラグが生じる、というユニークなコミュニケーションの現象は、現代の諸物語を生じさせる大切な意味を持っているように思われるのである。

さて、クローネンバーグ映画におけるエロで思ったのは、ごくわずか、直接的なシーンもあるが、説明的なものでしかない。とすれば、会話の中で、エロトークをエスカレートさせることに徹しておくだけの方が、より効果的な気がする。むしろエロかったのは、ヴァンサン・カッセルのシーンである。

スコアの余韻が、何かに似ているな、と思ったら、それはドルリューのものである。そこで、ハンプトン脚本の音楽は、どういったコンポーザーだったかを確認する。フェントン、ナイマン、カツマレク、グラス、デスプラ・・・ドルリューの名は無い。そして、ハンプトン脚本とクローネンバーグ・チームを結びつけたのは、製作のジェレミー・トーマスだろうけれど、そこからも、ヒントらしきものはない。

音色と言うか、感触は、ドルリューなどのフランス映画の感じがするが、完全にクローネンバーグ・チームが作り上げた作品で、音楽もショアである。流麗であろうとはしないショアと、ドルリューでは世界も違うので、どちらがとう、ということはないのですが。

東宝によるパンフは、ミニシアターの大きさではなく、普通のチェーン公開の形の大判。コラムを寄せているのは占星術研究家・鏡リュウジ、映画評論家・黒田邦雄、法政大学教授・鈴木晶の各氏と、監督インタビュー。これも、シャンテ、ル・シネマという公開館の客層にあわせての傾向と思えるが、いずれの原稿も題材についてのものばかりで、撮った作家や演じた俳優たちについての言及はほぼない。これならば、クローネンバーグ論はきついとしても、ハンプトン研究は読んでみたいし、キーラ・ナイトレイやマイケル・ファスビンダーについても触れないのは、勿体無かろうと思う。題材については、もちろん詳しい鈴木教授の解説があるのだから、題材以外をも観るべきと思うのだが・・全体の文章量は多いのに、結局は、映画を見ればわかる概要をなぞっての印象論にほとんどの行数を使っているのは、なかなか難しい表現になるが「残念」といわざるをえない。700円。

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