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2013年2月15日 (金)

よい意味での、オレ様映画の試行錯誤『アウトロー』

『アウトロー』於・新宿ピカデリー 

『アウトロー』が考えさせるのは、さまざまなスターたちの「オレ様映画」の試行錯誤についての話である。新しい才能に目を向けさせるために、自分が一肌脱ぐ的スターは、ジョニー・デップが以前には目立ったが、ブラッド・ピットも、考えるところがあるようになってきた。ディカプリオは、まだ、自分をどう輝かせてくれるか、の作り手を必死に探しているように見える。

彼らより、少し前からスターなのがトム・クルーズだ。トム・クルーズのオレ様映画にははっきりした特徴があって、それは、その作品のメインビジュアルが、必ずトム自身の顔のどアップであったということだ。『ミッション・インポッシブル』や『マイノリティ・レポート』の頃である。この頃は、どの映画もこの感じなので、いったい、どんな映画なのかさっぱりわからないオレ様ぶりであった。

方向性が変わったのは、助演的に出演するという珍しい参加ぶりをみせた『マグノリア』あたりからだ。今回の『アウトロー』のビジュアルは、以前のタイプに戻っている感じだが、作品自体は、監督の作家性とトム映画としてどう決着させるかの間で、迷いながら進んでいる。前半は、淡々と物語を語るために進めていくと、これが女弁護士を主役としたミステリーになっている。まるで、いかんいかんとばかり、不自然に出番を増やし、物語を強引に自分の方向に持っていくような後半が、その後に待っている。

ただ、気をつけるべきは、カーチェイスはあるが、基本的には、派手な演出は控えている。あまりに強いトム・クルーズはまあいるけれど、あくまで物語の主役は、ミステリーそのもののほうである。

ブライアン・シンガー一派といってもいいクリストファー・マッカリー監督作だけに、音楽面も、劇伴チックなスコア以外の、映画から逸脱しそうなポップスやロックなどは流さないので、音の面も、全くはしゃがない。この、全体を覆う落ち着いた雰囲気は、派手な大作を仕切る、そんな監督ではなく、ドラマ派の若手と仕事をしたい、というところがあるような気がし、そして、マッカリーとは相当、気の会うところがあったのであろう。

パンフには、トム・クルーズのインタビュー、小西未来氏、野島孝一氏のそれぞれのコラムがあるが、ともにトム・クルーズ論で、内容がダブる

クリストファー・マッカリーのインタビュー、文芸評論家の池上冬樹氏の原作解説。

そしてプロダクション・ノート。

まあ、公式資料中のインタビューは、ただのほめあいに終始してしまう危険性があり、このパンフ掲載のインタビューは、かなり、その典型例。あまりにメジャーな作品での解説は、確かに、突っ込んだ論は書きづらい。

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