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2013年3月 4日 (月)

美しすぎる風景が、逆説的に響いてくる『故郷よ』

『故郷よ』於・シネスイッチ銀座
この映画を見ていて、途中から『ニーチェの馬』を思い起こしてしまう。あの作品ほど、禁欲的な画面ではなく、むしろ、醜いものはあまりみせず、それゆえに余計に恐ろしい、というやりきれなさを感じさせながら、そのことを抜きにしていれば、美しい風景なことよ、という
美しければ美しいほど、絶望感が押し寄せる。そんな構造の中での、ヒロインの立ち居地である。自らをどう生かせばよいのか、答えは見つからない女性の、故郷と近郊都市のひたすらの行き来の日々。画面は芳醇であっても、そこに『ニーチェの馬』が描く残酷さを
重ねてしまう。
音楽は、ポーランドのジャズ・シーンで活躍するピアニストのレシェック・モジジェル。アコースティックなスタジオ・ライヴ的な音で聴ける哀しいメロディ基調のゆるやかなジャズは、久々にアート系作品で、サントラがほしい、と思わせるほど、おそらく、観客にかなり
強く訴えかける音であった。(サントラ発売なし。ダウンロード販売もない模様)
パンフレット。映画であることからの言及は、ミハル・ボガニム監督への詳細インタビューで読み取る。アンゲロプロスやタルコフスキーを意識しているのか。アンゲロプロス意識で驚いたのは、撮影がヨルゴス・アルヴァニティスが参加している、ということだ。
コラムは医師・作家の鎌田實、ふくしま会議理事の佐藤健太、NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金事務局長の神谷さだ子、歌手の加藤登紀子(劇中で「百万本のバラ」が印象的に使用され、日本でこの曲といえば、この方のため)の各氏によるもの。
いずれも、映画というよりも、福島、チェルノブイリの問題を中心とした原稿。この作品で、映画論はしづらいか。ましてや、すでに見に来ている人たちに向っては。

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