加賀まりこ加賀まりこした加賀まりこ『美しさと哀しみと』
『美しさと哀しみと』於・神保町シアター(川端康成特集)5月25日鑑賞
これほどまで、形を楽しむ映画はなかった。役者はもちろん、全員、ハマリ役なわけで、中でも加賀まりこの「およしになって先生」感全開は、この感じの「およしになって」的な楽しみを新たに形作ったエポックメイキング的なものなのじゃないか、と思う。
現代劇なのだけども、普段の会話からは逸脱した刺激的な単語が飛び交い、それを加賀まり子、八千草薫が口にする、という「いけない感じ」、単純化された仕草に、シンプルに画面の中に納まる感じなど、日本の古典芸能の形の応用であろうし、そのあまりにもの証拠に武満徹の音楽は和サイケとでもいいたい音色だ。
八千草が書くという巨大で奇怪な絵画は、実際は池田満寿夫の筆によるもの。登場人物たちが、それぞれの場で争いあう姿は、踊りを舞っているかのようでもある。
なので、ちょっと冷静になって、ハマってしまうと、刺激的なセリフが繰り出すたびに、笑い出しそうになる。この空間を、悲劇を正面から捉えて味わうのか、冷ややかに見るのか、その中間の心持で対するのが、もっとも観客としてイキなんじゃないか、なんて思う。
余談。私が、初めて加賀まりこを知ったのは多分、花王愛の劇場での、笹沢左保原作の『突如として男が』(原作は『轢き逃げ家族』カッパノベルス)でのヒロイン役で、夫以外の男と時を過ごす妻。モロ、メロドラマ推理小説な物語なのだが、嫌いじゃなかった。当時、小学生だと思うが。
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