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2013年5月28日 (火)

2つの物語が交錯はしないということ『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/ 宿命』

『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』於・ヒューマントラストシネマ有楽町
 
 思えば、シンプルな物語なのである。そして、物語の味の深さは、過ぎた時間の遠さにこそあるため、ある程度の上映時間が、物語のコクのためにこそ必要、そんな映画である。
 ストーリーテリングのワザに参りました的に思えたのは、ゴズリングのドラマとクーパーのドラマの語り方を極端に変えている、ということだ。それまでのこの、複数のドラマの連なりのような物語の場合、片方はモノクロで語るとか、ふたりのドラマを交錯させて、しかるべきところで合致させる、という手をとりそうだが(ソダーバーグやイニャリトゥ)時間軸的には、完全に分けて、そこはトリッキーにはしなかった。
 ゴズリングのドラマは、完全に視野を狭くしたドラマである。男の一途な情熱の爆発をたどるだけに、焦点はボケさせない。多面的にもしない。そこで、ゴズリングの、無言演技の見せ場となる。もう、このひとの仕草のオーラで見せる演技は、確かにカットするのが勿体無い域の感じがして、ただ、歩いているだけのシーンで、相当な濃厚なドラマを感じさせる。
 クーパーのドラマは、逆に実録ドラマ的に、事件を次々検証するかのテンポのよい進行で見せる。こちら側の方が、おそらく描いている年月や、社会的に起っている事柄の複雑さもあり、凝ったシンプルさを気取ると破綻しかねない。
 ゴズリング側の「間」とクーパー側の「間」は、ドラマ全体のテンポを形成していく。 
 『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』と『君と歩く世界』は、共にボン・イヴェールで終わるが、作品を包むムードも相通ずるものがある。
 
 音楽は、クラシカルな曲も流れるな、と思ったら、マイク・パットンのスコア以外に、アルヴォ・ペルトの曲を大量に使用しているようである。重要なところでモリコーネも使用。この感じは『きっとここが帰る場所』『ドライヴ』に似た音楽趣味。
 
 さて、パンフレットだが、前知識はあらためて必要としない作品のように思えるので、何が必要か。監督と主要キャストのインタビュー。作品評は宇野維正氏のもののみ。マイク・パットンと、想起するクリフ・マルチネスとの対比について書かれている。シアンフランスのインタビューの中には、マイク・パットンについても答えている。

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