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2013年7月22日 (月)

危険な感覚の推移を冷静にカラフルに描く『トランス』

『トランス』(於・ユーロスペース/ポルトガル映画の巨匠たち2013)
鑑賞7/15

  女性が自由、自立を求めて旅する物語か、と初めは思う。しばらく時間が経っても、映画の撮り方自体には、アブノーマルさを感じないため、シリアスな女性ドラマが展開していくのだと、まだ信じている。が「シリアス」とはなんぞや、ということもあるが、次第に、彼女が不条理な待遇を受けている画面の中に、平然と美しい画面が挿入されるようになる。
 エロがメインのフランス・イタリアあたりの手法だと、このあたりで、女性に陶酔の表情を浮かべさせるだろう。だが、それはない。淡々と、彼女に向けられるいわれのない仕打ちが続くだけだ。そして、それは逃げ場がない。大体、逃げ場とはどこにあるのかも分からない。ちょっと、シチュエーション・ホラーにも似た感覚だ。
 画面が、枯れていないのも、油断する要素だ。パゾリーニのように殺伐とはしていない。また、デカダンスという様式美でもなく、その感覚は、ある意味、モダンな世界の中で展開している。
 そして、そんな、ひたすらに堕ちていくことになる女性の物語に「トランス」というタイトルがつけられている。こういったタイトルのつけ方、これこそが、この作品での、あまりにも悪い冗談のユニークさで、このタイトルに気づくことで、物語の見方は、一気に客観化、もしくは、彼女の深い部分と同一化する。

 本当に、ポルトガル映画は、感覚のどこに旅させてくれるか思いもよらない破天荒な、冒険映画が多いことよ。

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