« 『トイ・ストーリー』的なものへのアート映画からの考察『自分に見合った顔』 | トップページ | 固定された景色の中の起承転結『ステンプル・パス』 »

2013年7月16日 (火)

リアルタイムで進行する人質映画、というジャンルを深める監督『コンプライアンス 服従の心理』

『コンプライアンス 服従の心理』於・シネマカリテ(鑑賞7/13)

 本当に、その事件だけをじっくりと描いた映画である。だけに、乾いた、すごく客観的な手法でとられている。かのようだが、後半で、少し、それについての言及があるが、実は、店長サイドから描いている物語である。物語というか、事件再現である。この「実際はどうだったのか」のあいまいな部分のズレや隠しによる恐ろしさの演出。自分が最も手法的に似ている、と思ったのは『ブレアウィッチ2』なんだけれども、近年の防犯カメラ映像によって淡々と描いているように見せて実は、的なホラーの感触に似ている。すなわち、おおまかな「大変なこと」の共有はあるのだけれども、細部でずれが生じるのは、それぞれの動揺ゆえか、真実を隠したいゆえか。
 このズレや隠しの演出は、この犯罪をもともと実行した男自体の恐ろしさはもちろんなのだが、そこではなく「本当に、自分は悪くなかったのか」という、操作された側の人間の苦悩をはっきりさせる。信じられない犯罪の再現ドラマではあるけれども、濃密に緊張した心理ドラマでもあるのだということが、そこでわかってくる。
 
 コンパクトなパンフレット。監督のコメント、実際の事件の詳細、コラムは、中央大学文学部教授の辻泉氏の作品論。特に、心理学の専門家による見解というものではない。
 監督のクレイグ・ゾベルは、興味を持っている「ジャンル」として「リアルタイムで進行する人質映画」をあげ、『狼たちの午後』『バス174』『ある戦慄』そして『ユナイテッド93』をあげる。舞台劇的心理ドラマのカメラワークの参考作品として、『バージニア・ウルフなんかこわくない』を挙げている。

  ところで、この『コンプライアンス』で描かれる、電話による心理操作は、いわゆる「オレオレ詐欺」「母さん助けて詐欺」に酷似してはいないか。つまり、店長が、大金を騙し取られる被害者と考えれば。直接的ではないが「オレオレ詐欺防止考察映画」にもなりうるのではないか。

|

« 『トイ・ストーリー』的なものへのアート映画からの考察『自分に見合った顔』 | トップページ | 固定された景色の中の起承転結『ステンプル・パス』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92257/57805245

この記事へのトラックバック一覧です: リアルタイムで進行する人質映画、というジャンルを深める監督『コンプライアンス 服従の心理』:

« 『トイ・ストーリー』的なものへのアート映画からの考察『自分に見合った顔』 | トップページ | 固定された景色の中の起承転結『ステンプル・パス』 »