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2013年7月14日 (日)

美しさの前にただ混乱する『私たちの好きな八月』

『私たちの好きな八月』
(於・ユーロスペース・特集 ポルトガル映画の巨匠たち)7/13鑑賞

 映画の構成としては、ホセ・ルイス・ゲリン『工事中』を思い出したが、そこに音楽が入り、そして、このミゲル・ゴメスという人は、いい意味で、雑念がありすぎる。もしくは、素晴らしいショットが撮れてしまうと、なんとかして、そのショットが必要な映画に作品を構成しなおしてしまうんじゃないか、と思う。
『私たちの好きな八月』は、色、動き、音、言葉などの音色など、美しいものがあふれていて、どのシーンにも、複数の美しい要素が存在していて、見とれてしまう。さあ、ここで、この映画のユニークなところは、編集ということになる。編集も、意識のズレは独特の快感を呼び起こすので、ストーリーのスムーズさだけでない、映画という音楽のビートを構成するためにも重要な技術だ。
 そして、おそらく、この映画では、多くの実験がなされている。そして、それはゴメス映画では、常に行なわれているもののようでもある。『私たちの好きな八月』で行なわれようとしたアイデアで面白いのは、普通に低予算娯楽映画としてつくることができる脚本を、素人に、その人たちの土地で朗読させて成立させてしまう、というものだ。朗読による成立は『熱波』でも試されるが、あたらは、ちょっとまた違う実験である。
 確信犯的に思える「作ることができなさそうな映画」のメイキング。もともと完成を考えていない映画のメイキングとその周辺は、『王様の映画』や『完全な真空』などを思い起こす。
 そして、忘れてはいけないのは、ゴメス映画の重要な要素である音楽へのふんだんな目配せだ。それも、わかりやすいポップス、本作に至っては、なんとカラオケまでもがモチーフだ。この大衆性とアートの接近は、ヴィム・ヴェンダースあたりと同じ趣味を感じさせたりもする。
 ゴメス映画における、明解にロマンティックなポップス、は統一して監督の趣味として存在するようである。この明解さはペドロ・アルモドヴァルでさえも難解に思えるほどのわかりやすさだと思うし、不思議な親近感キュートさを覚えさせる大切なチャームポイントとなっている。
 
 ラストは、もうシャイさを隠しての、インテリお遊びだけれども、裏方スタッフを重点的に紹介する、という姿勢も愛される一因を見ることができた。

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