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2013年11月16日 (土)

子供を産ま(産め)なかった女性「たち」の物語『四十九日のレシピ』

『四十九日のレシピ』於・有楽町スバル座

 思ったのは、まさしく女性脚本家、女性監督でないと作れない映画だな、と感じた。そう感じさせるシチュエーションは、もう冒頭から表されるので、そういうつもりで見てください的なことがしっかりわかってすがすがしい。
 途中(前半)で、主要人物たちが亡き母が残したレシピをなぞらえようと、みんなで向き合っている姿は、まるで、呪いの書を前に、唱えてはいけない呪文を唱えようとしている若者たち、というホラーの構図を思わず思い出して、構図的にはそうだけれども、これは決して「唱えてはいけない呪文」ではないので、メタファーではない。まあ、裏読みすれば、あの「レシピ」を見たことで、その影響下に彼らの心理はおかれることになるといえばそうなんだけれども。
 「家族の誰もが知らなかった母の過去」をさかのぼろうとするくだりなどは、母の過去がミステリー化しているところがあり、かつ、途中で、主人公がトラウマ的にもっている記憶の伏線の回収をしたりする部分、父の現在に過去が介入してくる部分など、「ありがちな、喪失の回復物語」をサスペンス、ミステリー的な語り口を入れることで、照れを隠そうとしている。そこは「ハートウォーム・ドラマ」では決して終わらないものがある中で、でも携帯メールを主人公と夫の「都会者どうしの通信」に限っていたりするのは、時代性を感じさせるものは、可能な限り排除している、そんな感覚と受け取った。
 とにかく「女性映画」であることは間違いなく、出てくる女性たちには複雑なドラマを容易に想像できる箇所が随所にあるのだが、逆に言えば、男たちの深層心理はなかなかわからない。父に至っては「自分はわからなかった」ということがわかる、というオチまであるので、コミュニケーションに関しては不器用、というステレオタイプ?的なものを感じたりもする。
 さて、音楽は周防義和さんですが、「ここは入れないほうがいいでしょう」攻撃をしたのじゃないか的に、ここは音楽入るだろう的なところにも、とにかく、特に前半、音楽は入らない。とくに女性たちを中心にした、複雑な心理の読み取りを観客に味わって、という作り手のメッセージなのだろう、と思い、濃密な沈黙を楽しんだりする。

 パンフ。松浦弥太郎氏のコラム、川口敦子氏のタナダユキ論、タナダ監督へのロングインタビュー、プロダクション・ノート。キャストのプロフィールはもちろんだが、スタッフのフィルモグラフィーが詳細なのが嬉しい。

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