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2014年1月 2日 (木)

原題「LA MIGLIORE OFFERTA」に作品全体の哀しいメッセージを思う『鑑定士と顔のない依頼人』

『鑑定士と顔のない依頼人』
於・新宿武蔵野館

 トルナトーレのミステリー・タイプの物語といえば、邦題『題名のない子守唄』を思い出す。あの作品は、最後まで、観る側が主人公に対して多層な客観性を維持することができることで、その作品特有の感覚が味わえ、結果、決して爽快ではないけれども、なんとも知れない心持を味わうことができた。
 が、今回は違って、描かれる主人公の心情が、かなり整理されている。また、運命にもてあそばれる、といった長期の物語でないため、物語をより、ミステリー的性格に焦点を狭めて観ることになる。
 が、この物語をミステリーで終わらせてよいかといえば、そうではなくて、本来は、ここで描かれている主人公の心情は、客観的に見た際に議論を生み、議論を進めることで、未見の人に新たな鑑賞の興味を呼ばせる構造であると思うのだ。だが、作り手は、そういった主人公を用意しながらも、物語を多重にみせることを封印している。
 モリコーネの音楽は、ヴォカリーズ(ヴォーカリスト5人の中にエッダの名前も確認)や、ストリングスもシンプルにすることで、不協和音と美しさの中庸をギリギリゆく、私にしか無理だろうサウンドを展開していて、さすが。
 見せ方というか、全体のバランスとして、感じられたのが「中盤あたりから、映画が進展しない」感覚。舞台は限定されていき、整理されていくことで、それまで主人公を警戒して距離をとって接していただろう観客の立場が、近くなるか、ぐっと遠くなるか、どちらかに急に乖離してしまう。が、その状態から、長く時間が続く感覚がする。
 ちなみに、鑑賞中に、いろいろ細かい突っ込みはしたくなるが、それは全貌で解決する。が逆に、解決するということは、事象がはっきりしている、ということ。そのぐらいの作りでは、本来、ドラマは成立しないだろうから、この物語が成立すること自体がファンタジーである、と思ってしまうのだが。

 パンフ。監督インタビュー、映画評論家のきさらぎ尚氏による作品解説、ジェフリー・ラッシュのインタビュー、ジム・スタージェス、シルヴィア・ホークスも短くあり。美術ジャーナリストの小川敦生氏の鑑定士とコレクターの解説、モリコーネのインタビュー。他スタッフも、プロフィールのフォローあり。そして、映画評論家・河原晶子氏のこちらも作品解説(個人的感想・この河原さんの解説は、おそらく、このぐらいは知っていた方が、映画を面白く見られるだろうと思う)。ラストに、謎解きのようなページがあり、親切、と思う反面、断言していいのか、という疑問も。

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