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2014年1月 5日 (日)

「物語」をあらかじめ持ったドキュメンタリー、そしてパンフレットも素晴らしすぎる『楽隊のうさぎ』

『楽隊のうさぎ』於・ユーロスペース

 すごいのは、そのほとんどが吹奏楽練習シーンにおける生徒たちおよび担当教師とのやりとり、というか空間のみで進行する物語。舞台化可能なぐらいに、コンパクトにまとめられている。
 そして、もう、自分の中学生の頃のことははっきりとは思い出せないが(というか、その頃は、ひたすら授業時以外は本を読んでいて、他の生徒と話すことはほとんどなかったから、もし、話していたら、という空想になるかもしれない)、一見、一生懸命セリフ話してます的雰囲気や、対するときのこわばった表情、というのはリアルなような気がするのだ。(作られすぎたドラマでの表情豊かな子供たちの方がファンタジーに思える)
 主人公の立場にいる少年は、主人公にさせられてはいるものの、どうすればよいかがわからない感じがスリリング。学校の放課後の風景を切り取る、という、一見よく似たシチュエーションだと、少し年上のドラマの「桐島」を思い出すけれども、「桐島」のように、校内の範囲で舞台がアクロバティックに変化するわけではないので、音響も計算しまくる、というよりは、自然に、彼らが出している音を「演技」「表現」として味わってほしい、その感じが出ている。
 劇中、教師のオリジナル、ということで披露される曲は磯田健一郎のものだが、純粋な意味でのオリジナル劇伴はおそらく、この作品にはない。ラスト、劇中にはでてこない唯一の「スコア」がエンドロールで流れるが、これが「フルート」がリードをとる曲なところが、物語の重要な展開と重なって泣かせる。
 そして、ほとんどが、地元の、演技未経験っ子によってキャストが構成されている、ということからは、「物語」をもったドキュメンタリー、と見ることもできるのだろう。

 パンフレット。プロデューサーのことば、監督のことば、原作者の寄稿、評論は、佐藤忠男先生の、過去の音楽邦画を例に出しての応援論、須川展也、エリック宮城両氏ほか、吹奏楽界の諸先輩のことば、キャストはプロの役者のプロフィール、生徒たちはひとりひとり、おそらく「映画を見るお客さんにひとこと書いてください」的なアンケートの回答がずらり。コラムはオリジナル曲について、中沢けい氏、越川P、音楽の磯田氏による鼎談、そして磯田さん本人による音楽解説、そして寺脇研、中西愛子両氏の評論、最後はなんと上映劇場の代表諸氏からのことばまである。まさしく「みんなが手作りで作った、本当の」「ご当地」「商業映画」であることがひしひし伝わる。ものすごく丁寧なパンフ。インディーズ映画、ご当地映画は、パンフ製作の際は、手本にしてほしい理想系すぎる一冊。

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