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2014年3月15日 (土)

可能な限りシンプル化された人間ドラマ『家族の灯り』

『家族の灯り』於・岩波ホール(3月9日鑑賞)

 人生を多く見つめてきた監督にとっては、世界の事象は、これほどにもシンプルに語りつくせるのだろうか。この作品に登場する、人物たちの表情は、世界のその世代、役割の人々の集約のように見え、そこで話される他愛なさと深刻さの両方を伴った会話も、人生における様々な状況を集約して、つまりは、これのようなもの、といい替えていくかのよう。ランプの位置は、シーンによって移り変わり、シーンごとの登場人物たちの力の上下関係がそこにあらわれるようだ。
 会話劇といえば、晩年のベルイマンの『秋のソナタ』は母と娘の会話の中に、長い歴史における母娘の愛憎がスペクタクルよろしく展開した。シンプルといえばタル・ベーラ『ニーチェの馬』は、事象を敢えて極度に純化させ、まるで描く時間(分・秒)の中にこそメッセージがこめられた。
 『家族の灯り』は、構図もストイックだが、背景、静物が、絵画を思わせる複雑さで光を捉える。絵画のような美しいフレームの中で世界を煮詰めてできあがったシンプルな物語。ある意味、そこまで達観しちゃあおしめえよ、的な思いも、自分の中ではある。

 パンフ。まず土屋好生氏がエキプ・ド・シネマ40周年に向けての思いから、『家族の灯り』へ思うところまで。オリヴェイラの紹介は、解説に1ページ、フィルモグラフィに1ページを割く。佐藤忠男氏は、他作品を例示することは避けて作品を人物描写から読解、澤田直氏が、オリヴェイラの監督論的な切り口から、作り方/構成から本作の独自性を考える。そしてオリヴェイラと、モロー、カルディナーレ、ロンズテールを初めとするキャストたちへのインタビュー。最後は、後藤岳史氏が、全体的に目を配った作品論。ということで、岩波ホールのパンフに珍しく、シナリオ採録は、なし。

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